【マイトデザインワークス代表 小室真以人さま インタビュー】
捨てられてしまう「桜の花と枝」を新たなカタチに。
“桜アップサイクルプロジェクト”のはじまり
【マイトデザインワークス代表 小室真以人さま インタビュー】
捨てられてしまう「桜の枝」を新たなカタチに。
“桜アップサイクルプロジェクト”のはじまり
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2024年春、BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel の館内を彩った桜。八重桜、陽光桜、鬱金桜…各地からこだわりの生花を運び込み、訪れた皆さまに桜花爛漫のひとときをお楽しみいただきました。
花が散るころ、桜の装飾もその役割を終えました。生花を装飾する以上、課題となるのが残される大量の花と枝。これらは本来、廃棄されてしまうものです。
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残された花と枝を捨てずに生かす方法はないか。そんな考えから、BELLUSTAR TOKYOでは“桜アップサイクルプロジェクト”をスタートしました。目指したのはオリジナルの桜染め扇子の制作。ご協力いただける工房探しに奔走するなかで、日本各地の職人たちがBELLUSTAR TOKYOの掲げるサステナブルの精神に共鳴してくださいました。
装飾の役目を終えた桜が、新たなカタチに生まれ変わる
扇子の制作は大きく3つの工程に分けられます。まずは桜の花と枝から鮮やかな色を取り出す最初のステップ、「染め」。これを担当していただいたのが、東京・蔵前のマイトデザインワークスさん。続いて染め上がった糸を一枚の生地に「織る」工程は、山梨・富士吉田のWatanabe Textileさんに。生地を扇子に「仕立てる」最後のプロセスは、京都・伏見の舞扇堂さんに熟練の技術を振るっていただきました。材料となる糸は、トスコ株式会社さんの麻糸を使用しています。
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環境への配慮、人と自然に寄り添う姿勢、そして確かな技術。各社ともBELLUSTAR TOKYOの目指す“地球に、まちに、人にやさしいホテル”と通じるものがありました。
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今回「染め」をご担当いただいたマイトデザインワークスさんの蔵前染所に伺いました。草木染めを生業(なりわい)とする同所は、東京都台東区に位置する“ものづくりの街”蔵前。下町風情あふれる街並みに、さまざまな工房が軒を連ねます。
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桜染め作業真っ最中のアトリエには、桜を煮出したことによるシナモンのようなほんのり甘くスパイシーな香りがいっぱいに広がります。代表の小室真以人(こむろまいと)さんにお話を伺いました。
小室「桜染めのご相談は時折お受けするのですが、八重桜に陽光桜、鬱金桜まで、一度に複数の品種を持ち込んでいただくのは本当に珍しいこと。私たちにとっても初めての挑戦で、めったにない機会だと思い、引き受けさせていただきました」
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桜の花と枝を砕く
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桜を煮出す
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煮出した液を濾(こ)す
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鮮やかな桜色の液を抽出
桜染めの鮮やかなピンク色は、花びらではなく枝から抽出されます。砕いた桜を水と一緒にじっくりと煮出し、布で濾(こ)す。この作業を何度も繰り返し、桜の色が取り出されるのです。
小室「難しかったのは、複数の品種を使って同時に染めることですね。抽出液にあわせるミネラル成分の配合を調整しながら、ちょうどいいバランスを模索していきました。また、桜染めは本来、花が咲く直前に最も濃い色が出るものなんです。今回は花が終わった後の枝ということで、通常よりもたっぷりと素材を使い、きれいな色味を出せるよう気を配りました」
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「綛(カセ)」と呼ばれる束状になった糸をたぐり、素早くまわしながら染色液にひたしていくと、まっさらだった糸がだんだんと染まっていきます。色ムラができないよう、作業は複数回に分けて少しずつ。美しく繊細な桜色は、こうして手作業で生み出されていくのです。
桜アップサイクルプロジェクトに込めた想いについて、こちらの記事もご覧ください。
→『BELLUSTAR TOKYOを彩った桜が、扇子に生まれ変わる。』